第32次笑の内閣
『12人の生まない日本人』
作・演出 高間響


あらすじ
鉄道はとうの昔に廃線、車で50分かかる隣町の大型イオンまで行かないとまともに買い物も出来ないとある山間部の田舎町堂島町。少子化も顕著で、町内5つの小学校はいずれも3桁を割り込んだため、役場は小学校を一つに統廃合し、小中一貫校を設立しようと計画していた。
その賛否を問うため、若手職員の提案により、25−45歳の子育て世代の町民をランダムに集め意見を求めるくじ引き民主主義会議を導入する。
役場職員2名と集められた10名によって始まった会議。各々賛成反対の意見を述べていく中、一人の男が待ったをかける。
その男の主張は、「そもそも行政が、子育て支援をすることは倫理に反する。子供を作ることは反道徳的だ」という「反出生主義」であった。
笑の内閣最新作は、なぜ日本は少子化なのか?そして反出生主義とはなんなのか?を「12人の怒れる男」以降の伝統である「12人による密室会議演劇」
反出生主義とは?
全ての子供は、「生まれて良いかという同意なしに、子供が欲しいという親のエゴによって強制的に誕生させられた」以上、人間は生まれない方がよく、子供は作るべきではないという思想。
さらに生まれた子供が結果的に幸せな人生を歩めたとしても、辛さゆえに親に対し「生まれてきたくなかった」と思う子供がいる一方で、「生まれてさえいれば幸福な体験が出来たのに、なぜ生んでくれなかったのか」と抗議する子供は存在しない。ならば、子供は作らない方が合理的であるとされる。
古代から多くの哲学者が訴え、南アフリカの哲学者、デイヴィット・ベネターの著書「生まれてこないほうが良かった(2006年)」は全世界で注目を集め、大ヒット漫画「進撃の巨人」の、主人公エレンの異母兄、ジーク・イェーガーによる「エルディア人不妊化計画」など、創作物にも取り上げられるなど、多くの人が生きづらいと思う世の中も相まって日本でも急速に支持者を増やしている。
事前予習放送 反出生主義ってなに?